メキシコのクリスマス前夜「Posada」って何?街と家庭で起きていること
- Taro Maruwa

- 4 日前
- 読了時間: 4分

12月の夜、なんだか賑やか
12月に入ってしばらくしたある夜、いつもより少し遅く帰宅すると、家の外がやけに騒がしいことに気づきました。窓を開けると、遠くから聞こえてくる歌声。それも一人や二人ではなく、複数の声が重なり合っているような、不思議な響きでした。
最初は、近所でパーティでもしているのかと思いました。でも、音楽というより「歌」。しかも、一定のリズムで、何かを掛け合っているようにも聞こえる。
しばらくすると、家の前の通りを、ゆっくりと人の列が通り過ぎていきました。子どもたちが多く、大人がその後ろを見守るようについて歩いている。笑い声もあるけれど、どこか落ち着いた雰囲気もある。
正直に言えば、最初は少し身構えました。
「この時間帯で、この人数?」
「今日はこれがどれくらい続くんだろう?」
日本で暮らしていた頃の感覚が、無意識のうちに顔を出していたのだと思います。
Posadaとは何か
後から知ったのが、これが Posada(ポサーダ) という行事だということでした。Posadaは、メキシコで毎年12月16日から24日までの9日間続く、クリスマス前の伝統行事です。
キリスト誕生の物語の中で、マリアとヨセフが宿を求めて歩いた場面を再現する形で、人々が家々を巡ります。歌によって「宿を探す側」と「迎え入れる側」を表現し、最後に扉が開かれ、皆で集まる。
こう聞くと、とても宗教色の強い行事のように感じるかもしれません。けれど実際のPosadaは、想像していたよりずっと生活に近いものでした。
教会だけで厳かに行われるのではなく、学校、職場、近所、そして家庭単位でも開かれる。準備も進行も、きっちり決め込まれているというより、「今年もこの季節が来たね」という空気で自然に始まる。
信仰でありながら、同時に暮らしの一部。それがPosadaの一番の特徴だと感じます。
街と家庭でのPosadaの違い
街や学校で行われるPosadaは、とにかくにぎやかです。人も多く、音量も大きく、ピニャータが割られ、お菓子が飛び交う。子どもたちは大興奮で、大人たちはその様子を楽しそうに眺めています。
一方、家庭で行われるPosadaは、驚くほど静かです。
ある夜、近所の家庭で行われたPosadaを、少し離れた場所から見ていました。集まっているのは、本当に近所の人たちだけ。歌声も控えめで、時間も短い。
終わったあとは、温かい飲み物が配られ、簡単な食べ物を囲んで、立ち話が始まる。誰かが仕切るわけでもなく、自然に人が集まり、自然に解散していく。
派手さはありませんが、そこには確かな“近さ”がありました。行事というより、年末に顔を合わせるための口実のような、そんな温度感です。
参加しなくても、知っておくと見え方が変わる
Posadaを知る前の私は、12月の夜の賑やかさに、どこか緊張していました。
「今日は静かに過ごせるかな」
「また外が騒がしくなるのかな」
でも、背景を知ってからは、感じ方がはっきりと変わりました。
それは“騒音”ではなく、季節の風景。子どもたちにとっては一年に一度の楽しみで、大人たちにとっては年末を迎えるための区切り。
意味が分かるだけで、同じ音、同じ光景が、まったく違って見えてくる。これはメキシコで暮らしていて、何度も感じることのひとつです。
駐在員としての距離感の取り方
Posadaに対して、駐在員が「こう関わらなければいけない」という正解はありません。無理に参加する必要もないし、誘われなければ静かに見守るだけでも十分です。
実際、私自身も、積極的に輪に入ったわけではありません。声をかけられたら挨拶をし、笑顔を返す。それだけで、その場の空気には自然と馴染めました。
大切なのは、知らないまま距離を取ることではなく、知った上で、自分に合った距離を選ぶこと。
その違いは、生活の安心感に大きく影響します。
Posadaは「入らなくても、知ると近づく文化」
Posadaは、外から来た人が無理に入り込むための行事ではありません。でも、少し知るだけで、街や人との距離は確実に縮まります。
12月の夜、外から聞こえてくる歌声。その意味を知った今では、以前のように身構えることはなくなりました。
「ああ、今年もこの季節なんだな」
そう思えるようになること自体が、メキシコでの暮らしに少しずつ馴染んできた証なのかもしれません。
駐在生活を豊かにするのは、大きなイベントや特別な体験だけではありません。こうした小さな理解の積み重ねが、日々の安心感をつくっていく。
Posadaは、そのことを静かに教えてくれる文化です。
知ることで、暮らしは少し安心になる
Posadaのように、意味を知るだけで見え方が変わる文化は、メキシコにはたくさんあります。
Maruwaでは、住まい・移動・生活立ち上げといった実務面だけでなく、こうした「知っていると安心できる」暮らしの土台づくりを大切にしています。
分からないことがあれば、大きな相談でなくても構いません。気になることを、気軽に聞いてみてください。
▶ 駐在生活についてのご相談、お待ちしております!





コメント